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団塊の世代って

 団塊の世代ってズルいよね。
 こんな言葉を見つけたのは、「たあくらたあ」という雑誌に連載されている、知り合いの岡本さんのコラム。
 確か昨年の夏ごろに出た号でみた気がするのですが、どの号だったか、ちょっとわからない。
 岡本さんはバリバリの団塊の世代で、これを岡本さんに向かって言ったのは、水俣のとある若い女性。
 この一文を見て、自分はひざを打つ思いでした。自分も常々、そう思っていたのです。
 そのことを岡本さんにお会いしたときに言うと、岡本さんはちょっと困ったような、複雑そうな顔をして、じゃ、それについて話そうか、と言って、しばらくそのことについて話したのですが、そのときの言い方が、これは受けて立たねばなるまい、というようなちょっとした覚悟のようなものが感じられて、印象に残っているのです。
 で、自分が話したのは次のようなこと。団塊の世代は、学生時代、散々暴れまわって、社会を変えるとか言っていたくせに、卒業したら、みな手のひらを返したように、既存の社会に従順になって働いて、自分たちはそれなりに成功して、裕福になったかもしれないけど、かつて変えようとした社会の矛盾については、何にもコミットせずに来て、当時よりそれはむしろ大きくなってしまった。そういうものだけ、後の世代に押し付けて、勝ち逃げするなんて、ずるい。
 岡本さんは、こういう話をちゃんと聞いてくれる。でも、自分は岡本さんが、学生時代に感じたものを、忘れずにここまでやってきた人だということを十分知ってる。今でも、よりよい世の中を作ろうとがんばっていることを知ってる。だから、こんなことを岡本さんに対して言うことは的外れなのだ。それも十分わかっているけれども、自分が本当に聞かせたいと思う人たちは、聞く耳を持っていない。聞かせる必要のない、岡本さんのような人になぜか刺さってしまう。

 ついでながら、たあくらたあ、いい雑誌です。週間金曜日が好きな人には特にお勧めします。産直泥つきマガジンといううたい文句で、真っ当なことを言っている今どき珍しい雑誌です。
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後藤健二さんについて

 イスラム国に捕まっていた後藤健二さんが殺害されたらしいことは、ご存知のことだと思います。
 自分は面識があるわけではないし、お名前を知ったのも、イスラム国に捕まったときからです。
 当然、何も知らないに等しいですが、この数日、彼の安否が気になって仕方がなかったです。そして、なんとなくですが、彼は助かるだろうと思い込んでいました。
 それは、彼のジャーナリストとしてのスタンスからです。戦地における、子どもたちなど、世界に向けて声を発する手段を持たない、弱い立場にある人たちの状況を私たちに伝えてくれていた人だったからです。こういうところから、平和への思いが伝わってくるし、そういう人をまさか殺すことはないだろうと高をくくっていたのです。
 そして、彼の今回のイスラム国入国の目的が、先日同様に殺害されたと見られる、湯川遥菜さんを救出しようとしたことだと聞いていたからです。このことについては、なぜそんな無謀なことをしたのだろう、という疑問が残りますが、彼にとってはどうしてもしなければいけないことだったのでしょう。湯川さんがイスラム国に捕まってしまったことに対して責任を感じていたという報道もあります。おそらくベテランのジャーナリストとして、本能的に守っていた安全と危険の境を越えてしまったとおもわれます。
 この行動に関して批判をする人たちもいるようですが、自分にはどうしてもそういう気持ちにはなれません。無謀ではあると思いますが、他人のために勇気を持って行動した、高貴な方だと思います。そういう人を天が見捨てるはずがない、と信じ込んでいました。
 自分は、イスラム国に対して、同情的に思っていました。パレスチナや、イラクでのことを聞くにつけ、このような過激な人たちが現れるのも、無理からぬことだろうと思っていました。しかし、今回のことを見るとどうでしょう。やはり、ただの血に飢えた、人殺しの集団といわざるを得ません。
 今の日本が、今までの平和主義を捨て、アメリカやイスラエルなどと歩調を合わせて「十字軍」に参加したためだといっていますが、彼のやってきたことは、そのような国の政策から最も離れたものであり、彼が犠牲になるいわれはないからです。
 それからやはり、日本の首相、あなたのせいで彼が犠牲になったといっていい。彼ら二人が人質になっていることを知りながら、親米のアラブ各国にイスラム国と戦うために2億ドルを援助するといったことは事実で、それがために彼らは全世界の目の前に出てきてしまった。日刊ゲンダイの記事によれば、それからイスラム国と直接、接触も交渉もしていないという。これが本当なら、彼らを助ける気があったのかも疑わしい。もしかしたら、後藤さんはそういう国の態度を感じていたから、あのような無謀な行為に出たのではないだろうか。
 そしてもうひとつ、後藤さんが犠牲になって、そういった今までの軽率な言動を反省しているのかと思いきや、逆にこういった場合に自衛隊を海外に派遣できるように法律を変えようとしているという。はじめからそのつもりで、彼らを見殺しにしたのではなかろうか。
 後藤さんは、今回のことで日本を発つ前に、どんなことがあっても自分の責任。シリアの人たちを責めないでほしい。と言い残していったという。だとすれば、彼の遺志とまったく逆ではないか。彼のことを利用しないでほしい。彼の遺志を尊重してほしい。覚悟の上とはいえ、こんな死に方をするべき人ではなかったはずだから、せめて。

ヨセフについて

 昨年の春から、町の牧師さんのところで聖書を読んでる。
 旧約聖書の創世記を一通り読み終え、今は新約の福音書だ。
 何しろ、その道の専門家がついているので、一人で読むよりもはるかに深く理解できる。というか、一人では読み通すことすらできなかったと思う。
 なぜかというと、遠い昔の、遠く離れた場所が舞台で、それを想像するにはまったく知識がかけているし、非常にそっけない語り口が多いので、登場人物になかなか感情移入しにくく、物語に入っていくことが難しいのだ。
 自分が聖書というからにはさぞ立派な人たちの行いが描かれているんだろうと思い込んでいたことも一つの壁になっていたのかもしれない。しかし、この牧師さんが言った言葉でもっと楽に読んでいいんだということがわかった。
「聖書にはね、まともな人はほとんど出てこないんですよ」
 そのまともでない人たちが犯した罪を抱え、それでも神が見捨てずについていたために少しずつ変わって行ったりすることが描かれている、そんな書物であるらしい。創世記の中の人物も、人として弱かったり、ずるがしこかったりするが、読み進めていくうちにその一人一人が魅力的に見えてくるから不思議だ。
 そんななかで、自分が一番好きなのは、創世記の最後の主人公である、ヨセフだ。聖書に出てくる、数少ないまともな人間の一人でもある(笑)。
 ヨセフの父、ヤコブには4人の妻がいたが、その中で本当に愛したのはラケルだけだった。ヨセフはラケルの産んだ子どもで、しかも年をとってから生まれた子どもだったので、ヤコブはヨセフのことを最もかわいがった。
 ヤコブは自分の気持ちに正直な人だったので、ヨセフをあからさまにひいきした。そんなことから、ヨセフは他の兄弟たちからねたまれることになる。
 あるとき、父の使いで、ヨセフが他の兄弟たちのところに行くと、兄弟たちはみなで彼を捕らえ、イシマエル人の隊商に売り飛ばしてしまう。そして父ヤコブには、ヨセフは獣に食べられてしまったと報告する。
 ヨセフはその後エジプトの侍衛長の家に売られ、そこで奴隷として働くことになる。若くて容姿が良く、賢くて気性もまっすぐなヨセフは、家の主人に気に入られ、まもなくその家のことのすべてを任されるようになる。ところが、主人の妻にせまられる。ヨセフはかたくなに拒み続けるが、逆に彼女に、彼女を襲おうとしたという濡れ衣をきせられて、牢屋に入れられてしまう。
 話はずれるが、このエピソードを種にした物語がイスラム教の神秘主義者によって書かれている。「ユースフとズライハ」という物語で、ズライハがその家の妻の名前らしい。イスラム教でも聖書はコーランやハディースに次ぐ聖典で、同じアブラハムの宗教、同じ神を信じる兄弟の宗教なのだ。ちなみにヨセフはユースフとして、コーランにも出てくる。
 牢屋に入れられたヨセフは、このようなつらい時期にあっても、決して絶望しない。おそらく神を信じ、主がそばにおられる事を感じていたからで、悪いことがおきてもそこからさらに落ちることがないのだ。
 あるとき、エジプトのパロの給仕役が見た夢をヨセフが解いたことをきっかけにして、パロ本人が見た夢を解くことになる。それは、エジプトの7年間の大豊作とその後の7年間の大飢饉を予言するものだった。この解き明かしを聞いて、パロはヨセフをエジプトの宰相に任命する。
 自分の兄弟の裏切りのために、奴隷から囚人を経て、一国の宰相にまでなったヨセフだが、これは一人の男のサクセスストーリーではない。彼の物語の核心はこのあとに来る。
 最初の7年の豊作の年の間にやがて来る大飢饉にそなえてさまざまな準備をしたので、エジプトは被害を最小限に抑えることができた。それどころか、同じように飢饉にあった近隣の国から食糧を買い求める人がやってきたので、かえって国力が増すことになる。
 ヨセフの父、ヤコブとその兄弟たちの住むカナンの地も飢饉となり、ヤコブはヨセフの兄弟たちに命じてエジプトに食糧を買いに行かせる。末の弟ベニヤミン(ヨセフと同じ母から生まれたただ一人の弟)だけがヤコブの元に残り、残りの兄弟全員がエジプトに発つ。こんなところにも、ヤコブの偏愛が現れている。
 彼らはエジプトに着くと、ヨセフと面会し、食糧を買いに来たことを告げる。ヨセフは一目で兄たちだということがわかるが、兄たちは、エジプトの装束に身を包み、エジプトの言葉を話す目の前の男が、かつて自分たちが奴隷商人に売り飛ばした弟だとはまったく気づかない。
 ここからのヨセフは、今までの品行方正な彼とは思えないような言動の連続だ。兄たちをエジプトの動静を探るためにやってきたスパイだときめつけ、牢屋に入れてしまう。そして、兄たちのうち、一人を人質として残し、末の弟を連れてくることを条件に彼らを釈放する。彼らは、父ヤコブのベニヤミンへの偏愛を知っていたから、そんなことをしたら年老いた父は死んでしまうと抗弁するが、ヨセフは聞き入れない。そして、彼らを釈放する際に用意した食料の中に、彼らが用意した代金をそのまま入れておいたりもする。
 ここのくだりのヨセフについての描写は聖書のほかの場所に比べると非常に詳しい。兄たちについに会えた喜び、自分のことを名乗り出たい気持ち、兄たちに対する恨み、そんな複雑な感情に振り回されるヨセフの心の揺れや葛藤が手に取るように見える。
 兄弟たちは父ヤコブの元に帰り着くが、末の弟ベニヤミンを手放したくない彼はエジプトに彼を行かせることに同意しない。兄弟たちもそれ以上このことに触れることはせず、彼らがエジプトから持って帰った食料を食べつくすまで無為に時間を過ごす。
 食料がなくなると、ヤコブは兄弟たちに再びエジプトに行って食糧を買ってくるように命じる。しかし兄弟たちはベニヤミンを連れて行かなければ、行く事はできないという。それでも首を縦に振らないヤコブに対し、兄弟の一人のユダが、ベニヤミンは必ず無事に連れ帰る、何かがあったときは、自分が身代わりになるということを約束し、ようやくヤコブも腹をくくって彼らを送り出す。
 エジプトに着いた彼らは、ヨセフの家に招待され、食事を共にする。そのときに席が兄弟の年の順にきちんとそろえられてあり、彼らは顔を見合わせるが、それでもヨセフのことには気づかない。
 このように彼らをもてなし、食料などの荷物を整えさせる段階で、ヨセフは家づかさに命じて自分の家の銀の杯をベニヤミンの荷物の中に忍び込ませておく。翌朝、彼らがエジプトを出るときに家づかさに後をおわせ、彼らが銀杯を盗んだと言って、再びヨセフのもとに連れ帰らせる。
 どうしてあなた方は善に悪をもって報いるのかと問い詰めるヨセフ。何のことだかわからない兄弟たち。ヨセフは、彼らの荷物をあけて調べさせると、ベニヤミンの荷物から、彼の家の銀杯が出てくる。ヨセフは、盗んだ犯人を自分の奴隷とするという。兄弟たちは、彼だけを置いていくわけには行かない、われわれ全員あなたの奴隷となると言う。ヨセフは、奴隷となるのは犯人だけでよい、他のものは父のもとに帰れと突っぱねる。
 そのとき、ユダが前に進み出て、このベニヤミンを父ヤコブがどれだけ愛しているかということ、彼の同母の兄(ヨセフのこと)が行方不明になって以来、ベニヤミンだけが生きがいで、彼をつれて帰らなければ父は悲しみのうちに死んでしまい、自分は父に対して永久に罪を負ってしまうこと、そうするくらいならば、自分を彼の代わりに奴隷として使えさせてほしい、ということをヨセフに向かってとうとうと語った。
 それを聞いて、ヨセフは感情を抑えきれなくなり、人払いをすると、兄弟たちに自分がヨセフであることを明かす。
 「わたしはあなたがたの弟ヨセフです。あなたがたがエジプトに売ったものです。しかしわたしをここに売ったことを嘆くことも悔やむこともいりません」
 ヨセフは、今までの出来事はすべて神のご配剤であり、われわれをこの飢饉から救うために自分をここに遣わしたのだという。だからもう、昔のことは悔やまなくてよいのだ、と。
 そして、飢饉の激しいカナンの地から父ヤコブをはじめ一族全員をエジプトのゴセンという、羊を飼うのに適した土地に住まわせ、彼はエジプトの宰相としてその後も善政を敷いた。
 
 この物語のクライマックスのところは、何度読んでも感動する。なんという、大きな赦しだろう。今までのつらい思い、うらみ、そういったものがすべて昇華されて、神の摂理、配剤となる。しかしここに至るまで、どれだけの忍耐が必要だったことか。こんな美しい結末を得る前に、投げ出してしまったことはいくつあるだろう、と自分を振り返って思う。生きている間に、せめて一度くらいは、このような感動を得たい、と思う。
 
 
プロフィール

ルーシェンカ

Author:ルーシェンカ
長野県の小海町で家具を製作しています。
家具のこと、木のこと、森のこと、その他の身の回りのことを紹介していきたいと思います。
メールアドレス atsushitakahashi@nexyzbb.ne.jp

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