最近、すっかり読書から遠ざかってしまった私。
それでも本屋に行くことは好きで、特に買うあてもなく、本を眺めているだけでいくらでも時間がつぶせます。
そうやっていると、時々本が呼ぶというか、読んでみたい本に出会うことがあります。
背表紙だけで、そう感じるのですから、その本の何を知っているというわけでもないのですが、不思議なことに今までそうやって買った本に、ほとんど外れはありません。
この本もそんな一冊。
日高敏隆先生の「世界を、こんなふうに見てごらん」
この題名の呼びかける感じのやわらかさ。大人が、子どもにむけてやさしく語りかけているようです。
日高先生は、動物行動学の高名な学者さんですが、子どものころは、スパルタ式の学校があわなくて、自殺をしようと思ったこともあったそうです。昆虫少年で、好きなものは好き、上から生きかたを押し付けられるのは大嫌い。そんな生きかたを貫き通した方のものの見方は、やわらかくて、しなやかで、力強いです。
私ごときがあれこれ言うよりも、冒頭の一説を紹介するほうが、この本の魅力をずっとよく伝えてくれます。
ぜひご一読を。
「子どものころ、ぼくは、虫と話がしたかった。
おまえどこに行くの。何を探してるの。
虫は答えないけれど、一生懸命歩いていって、
その先の葉っぱを食べはじめた。
そう、おまえ、これが食べたかったの。
言葉の代わりに、見て気がついていくことで、
その虫の気持ちがわかる気がした。
するとかわいくなる。うれしくなる。
それが、ぼくの、いきものを見つめる原点だ。
どうやって生きているのかを知りたいのだ。
おまえ、こんなことしているの。
そうなの、こういうふうに生きているの。
その物語がわかれば、すごく親しくなれる。
みな、ようよう今の環境に適応して生きている。
生きることへの深い共感は、そうやって生まれてくる。
世界を、こんなふうに見てごらん。
この本を、これからの少年少女と大人に贈る。
人間や動物を見るときのぼくなりのヒントをまとめたものだ。
生きているとはどういうことか、
豊かな見方をするといいと思う。」
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